この記事では、中高生が学校と音楽を両立するための考え方と、南福島ミュージックルームが中高生のために行っていることをご紹介します。2歳からシニア世代まで年代別に書いた記事も、関連記事からご覧いただけます。

生活も心身も大きく変化する
中学生、高校生になると、生活は急に忙しくなります。
一日の予定を見れば、中高生の忙しさは、フルタイムで働く大人と変わらないほどです。
- 朝早く起きて通学
- 部活動の朝練
- 授業
- 部活動
- 委員会活動
- 塾
- 自宅で宿題、試験勉強、翌日の準備
睡眠が必要である一方、試験や課題のために就寝が遅くなることもあります。
高校生になると、さらに通学時間が長くなったり、進路について考えたりする時間も増えます。
進路準備、友人関係、家庭での役割なども重なります。
身体も大きく変化する時期
思春期は、身体、認知、感情、人間関係が大きく変化する時期でもあり、子どもから大人へ移行する重要な発達段階です。
その生活に、小学生時代と同じ練習量を加えようとすれば、負担を感じることもあります。
そのため、小学生の頃と同じように、
- 毎週レッスンへ通う
- 毎日決まった時間、一定量を練習する
ことが難しくなるのは当然です。
弾きたかったあの曲に手が届く時期
中学生になる頃、多くの生徒は初級課程を修了して、中級から上級の教本や曲集に進み始めます。
これまで総合学習レッスンで積んできた、
- 読譜力、分析力
- 音感、ハーモニー感
- テンポ・拍子・リズム感
- 運指技術
- 表現技術
- 知識とイメージ力
などが結びついて、ようやく弾ける曲の幅が広がる時期がきたところです。
- 映画やアニメの音楽。
- クラシックの名曲。
- 推しが歌っている曲。
- 複雑なリズムや和音を持つエレクトーン曲。
- いつか弾いてみたいと思っていた曲。
小学生の頃には難しかった曲へ、ようやく手が届き始めます。
この時期に、
「中学へ進学するから」
「部活動が始まるから」
という理由だけで完全に楽器から離れると、せっかく育った力は少しずつ使われなくなります。
特に、楽譜をスムーズに読む力、指の動き、複数のことを同時に処理する力は、長く使わなければ低下します。
後から再開することはできても、以前と同じ段階に戻るには、時間がかかるケースがほとんどです。
やっと音楽が本当に面白くなる地点へ来たところで手放してしまうのは、あまりにも惜しいと私は考えています。

変えることが必要な時期
ここで必要なのは、
「今の生活で、どのような形なら続けられるのか」
を考えることです。
中学生、高校生の時期は、音楽を辞める時期ではなく
音楽との関わり方を、今の生活に合う形に変える時期です。
続け方と練習量を変える
レッスンを続けるというと、
- 毎週レッスンへ通う
- 毎日練習する
- 宿題をすべて仕上げる
- 発表会へ毎年出る
- グレード試験を受ける
ことを想像するかもしれません。
しかし、続け方は一つではありません。
- 試験前はレッスンを減らす。
- 部活動が忙しい月は、短い曲へ変更する。
- 学校行事が終わってからレッスン回数を増やす。
- 長期休暇に集中して取り組む。
- 練習時間が少ない時期は、レッスン内で一緒に練習する。
これも、音楽を続ける形です。
教室が大切にしているのは、これまでの練習ペースに拘らず、
今の生活に合う形で、音楽と繋がることです。
忙しさに合わせて、練習目的を変える
時間に余裕があるときには、
- 新しい曲を読む
- 難しい部分を繰り返す
- 表現を深める
- 曲を完成させる
- 発表会や試験へ向けて準備する
ことができます。
しかし、試験期間や部活動の大会前には、同じ練習量を確保できません。
そのような時期には、練習の目的を変えます。
時間がある時期
- 新しい曲へ進む
- 技術的な課題に取り組む
- 長い曲を仕上げる
- 発表会やグレード試験を目指す
忙しい時期
- 一部分だけ弾く
- 好きな曲を一回弾く
- 楽譜リーディングだけをする
- 曲を聞く
- レッスンで一緒に練習する
- すぐ弾けそうな曲だけ取り組む
忙しい時期に必要なのは、大きく伸びることではありません。
音楽から完全に離れないことです。
一本の細い糸でも残っていれば、生活に余裕が戻ったときに、そこから再び広げられます。
発表会の参加スタイルを変える
南福島ミュージックルーム の発表会は、一人一人が選曲・演出などを自分で決め、客席と一緒に楽しむスタイルです。
演奏の完璧さや順位を競うような舞台ではありません。
それでも、舞台を目標にすることで、
- 曲を最後まで仕上げる
- 自分の表現を考える
- 緊張の中で演奏する
- ミスから立て直す
- 自分の演奏を振り返る
経験ができます。
忙しい中高生の参加者たちは、
- 短い曲を選ぶ
- 学校行事と重ならないよう早めに準備する
- 暗譜を必須にしない
- 演出で楽しむ
など、生活と状態に合わせています。
発表会で最も大切にしているのは、
- 最後まで演奏する。
- 音楽の流れを保つ。
- 崩れても立て直す。
- 自分で決めた表現を一つ客席へ届ける。
この4つ。
これは、中高生に関わらず、幼児からシニア世代までの参加者全員に伝えていることです。
曲の長さやレベル、演奏の優劣ではなく
自分で選んだ曲で、演奏を通じて自己表現をすることにこだわる。
それだけで「大成功」です。

「前はできたのに・・」より「今はこれができる」
練習できない自分を責めない
中高生になると、自分の演奏を以前より厳しく評価するようになります。
曲の難しさも理解できるため、
「全然練習できていない」
「前より弾けなくなった」
「レッスンへ行っても仕方がない」
と考えることがあります。
しかし、練習できなかったからといって、レッスンへ来る意味がなくなるわけではありません。
教室では、
- 前回の内容を思い出す
- 一緒に譜読みをする
- 難しい部分を分ける
- 練習方法を整理する
- 学校生活に合う曲へ変更する
- 今後の予定に合わせて目標を組み直す
ことができます。
レッスンは、宿題を完成させた人だけが来る場所ではありません。
練習できなかった理由も含めて、次の方法を考える場所です。
できること:小さく区切った目標設定
時間がないと感じるときには、まず一週間の予定を並べてみます。
- 帰宅時刻
- 部活動のある曜日
- 塾や習い事
- 宿題に必要な時間
- 試験期間
- 休日の予定
- 睡眠時間
そのうえで、
「毎日30分練習する」
のような理想を置くのではなく、
- 火曜日:部分練習を10分だけ
- 木曜日:弾かない
- 日曜日:部分練習15分、アンカー練習15分
と、現実的に考えます。
目標を小さくし、方法を具体的に決める。
そうやって、まずは一週間の中で、音楽に向かえる場所を1つ探すところから始めてみましょう。
できること:短時間メニュー
短時間練習は、最初から最後まで通して弾く練習には向きません。
まず、5分間、10分間の短時間に向く練習メニューから、1つに絞って始めましょう。
- 難しい二小節だけ弾く
- 片手だけ確認練習
- 一か所の指使いを決める
- リズムだけ練習する
- 曲の構成を楽譜で確認する
- 好きな部分だけ弾く
一つ終われば良し、とします。
ここで「練習が足りない」と思う必要はありません。
これは今日、「実行できた練習」です。
もともと練習は、
量よりも、目的をしっかり持って行うことで、質が変わります。
できること:自分で練習方法を選ぶ
小学生までは、保護者や先生が曲や練習方法を提案する場面が多くあります。
中高生では、本人の意思をより重視します。
- 何を弾きたいか
- どの程度の難しさに挑戦したいか
- 課題の数は維持か減らすか
- 次の試験まで何週間あるか
- レッスンの頻度はどのくらいがいいか
- 発表会へ出たいか
- グレード(級)を受験したいか
を一緒に考えます。
本人が選び、その選択を実現する方法を先生と一緒に組み立てます。
先生の役割は、生徒を前へ引っ張ることではありません。
思春期にある生徒の状況を観察し、必要な指導内容と手法を調整しながら
生徒が自分で取り組む力「音楽的自立」支えることです。

周囲ができること
忙しさに合わせて、レッスン回数を変える
南福島ミュージックルームのレッスンは、曜日・時刻・回数などを定めた固定制ではありません。
好きなタイミングで、受講したい日・時刻・長さ(何分レッスンにするか)を選び、2〜8回分をまとめて予約できる、変動制です。
この制度にした理由の一つが、中高生の生活です。
部活動の予定は、試合やコンクールなど、行事によって変わります。
試験の日程も様々です。
学校行事や家族の予定と重なることもあります。
曜日も時刻も回数も、変動制で予約できるから
- 忙しい月は回数を減らす
- 余裕のある月は回数を増やす
- 試験前は休む
- 長期休暇にまとめて受講する
- 状況に合わせて30分、45分、60分レッスンから選ぶ
ことができます。
これは、単に都合のよい予約サービスを作ろうとして始めた制度ではありません。
生徒が成長して生活が変わっても、弾く楽しみを諦めなくていい、その支援ができる教室になろう。
そんな思いから作った仕組みです。
弾きたい曲に取り組みやすくする
中高生になると、弾きたい曲がはっきりしてきます。
その一方で、
「弾きたい曲は難しい」
「忙しくて長い曲は仕上げられない」
という問題も起こりがちです。
そこで、教室では
- 弾きたい曲の中から取り組みやすい楽譜を選ぶ
- 難しい曲に取り組む時は他の課題を減らす
- 易しい編曲の楽譜を使う
- 短い曲と長い曲を組み合わせる
- 学校行事や試験前は短い曲に取り組む
など、進め方を調整しながら指導しています。
「弾けないから楽譜に手を加える」をしない
自分ではない誰かが、作曲・編曲した楽譜を使っているとき、
難しいから、曲が長いからと言って、弾けない部分を勝手に省略したり、勝手に譜面を書き変えたりはしません。
難しければ、弾くために必要な技術を身につけるか、現在の力に合う楽譜を選びます。
「作曲者や編曲者が生み出した音楽を尊重する」
これは「弾く人の心得」です。
中高生であれば尚更、作者と作品をリスペクトできる大人になって欲しいと願っています。
保護者はどこまで関わる?
中高生になると、保護者が練習内容を細かく管理する必要は少なくなります。
しかし本人が「親が完全に関心を失った」と感じると
「音楽を続けても、誰も興味を持っていない」
と孤独感を感じることもあります。
保護者には、小学生までの関わり方と同じように「聴き手」「演奏のファン」として接していただきたいと考えています。
- 聞いている姿を見せる
- 弾いている曲について尋ねる
- 発表会や動画を一緒に見る
- 忙しい時期には予定を一緒に確認する
- レッスンを続ける方法について相談する
「練習したの?」と確認するよりも、
- 今は何の曲を弾いているの?
- この曲を聴くと気持ちがホッとする
- この前の曲、また聞きたい
という言葉の方が、中高生には届きやすいことがあります。

続けた先にあるもの
大人になったときほど、弾ける人であってほしい
私は、小さな子供たちにも、中高生にも、大人になったときほど楽器を弾ける人であってほしい、と思っています。
子どもの頃は、家族、先生、学校、友人など、周囲に人が多くいます。
大人になると、自分で判断し、自分で抱えなければならないことが増えます。
仕事。
家庭。
介護。
人間関係。
将来への不安。
言葉にするほどでもない、小さな疲れが溜まっていく。
こんな時、楽器を弾くことが、言葉を使わずに気持ちを吐き出す術になります。
- 誰かに説明しなくてもよい。
- 理由を整理しなくてもよい。
- 音を通じて、自分の内面を外に出すことができる。
これは、曲や演奏のレベルに関わらず
「気持ちを込めて弾く」だけで受け取れる、音楽の恩恵です。
続けた先で、音楽は自分のものになる
続けてきたからこそ、手に入るものがあります。
- 気持ちを切り替える時間
- 本当の気持ちを表現する時間
- 誰かとつながる方法
- 言葉にしにくいものを表す方法
実際、そうした中高生の姿をこの40年の間に大勢見てきました。
そして、続けてきたからこそ、いざ楽器演奏が必要になった時にも、慌てる必要がありません。
保育士になりたい、音楽の先生になりたい。
どれも受験シーズンに入ってからスタートするのでは遅すぎます。
まとめ
中高生は、幼かった頃と違って「習わされている感」ではなく、
「自分で選んだもの」という意識、自覚を持ちはじめる年齢です。
問題解決のために、自分で考えたり、選んだりもします。
- 毎週通えなくてもよい。
- 毎日練習できなくてもよい。
- 忙しい月があってもよい。
- 一度ペースを落としてもよい。
自分で決めて、先へ繋ぐことができる年齢です。
生活が変わるたびに音楽を諦めるのではなく
今の自分に合う形へ、続け方を変える。
そうして、小学生までに身につけた力を、中高生でさらに深める。
やがて大人になったとき、自分のために音楽を奏でられる人になるように、
大人に向かう長い時間を見据えながらレッスンを行っています。
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参考資料
- World Health Organization「Adolescent health」
思春期を、身体、認知、心理社会面で急速な成長が起こる、10〜19歳頃の重要な発達段階として説明しています。 - Goopy, J.ほか「Music learning and school-aged children’s and adolescents’ wellbeing: A scoping review」
学齢期の子ども・青年の音楽学習とウェルビーイングに関する研究を整理したレビューです。音楽学習が個人的、社会的、教育的なウェルビーイングを支える可能性があるとする一方で、地域的な偏りもあります。 - Chong, H. J.ほか「Scoping Review on the Use of Music for Emotion Regulation」
音楽と感情の調整に関する研究を整理したレビューです。研究の多くは音楽鑑賞を対象としており、楽器演奏に関する研究は少なめです。
この記事について
この記事は、南福島ミュージックルームにおける中学生・高校生への指導経験と、思春期の発達、音楽学習とウェルビーイングに関する研究をもとに執筆しています。
中高生の生活状況、練習時間、音楽への関わり方には個人差があります。記事内の内容は、音楽学習による特定の心理的・発達的効果を保証するものではありません。




