幼児教具のはめ込み図形で遊ぶ女児

2〜3歳:レッスンで育てる力

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音を楽しみながら、学ぶための土台を育てる

「音楽のレッスンは、何歳から始めるのがよいのでしょうか」

小さなお子様を持つ保護者の方から、よくいただく質問です。

南福島ミュージックルームでは、2〜3歳のお子様を対象にしたプレクラスを設けています。

ただし、早く始めれば、将来必ず上手に弾けるという意味ではありません。

また、3歳までに始めなければ手遅れになるわけでもありません。

この時期のレッスンで大切にしているのは、演奏技術を早く身につけることではなく、

  • 人の話や音を聞く
  • 音に合わせて身体を動かす
  • 見たものや聞いたものをまねる
  • 指や手を使って試す
  • 音からイメージを膨らませる
  • 先生や保護者と音楽を共有する

といった、複数の働きの組み合わせです。

幼児期には、注意を向けること、覚えておくこと、行動を切り替えることなど、将来の学習にも関わる力が発達していきます。

歌やリズムに合わせた動き、まねをする遊び、順番を守る活動なども、こうした力を使う経験になります。

教室では、これらを「能力を鍛えるための訓練」として機械的に行うのではありません。

子どもが音を面白いと感じ、自分から見たり、聞いたり、動いたりする中で、音楽を学ぶための準備を少しずつ整えていきます。

ペグボードで遊んでいる女児

すぐにピアノを弾くことが目的ではありません

小さな子どもの音楽レッスンというと、早くから鍵盤を弾かせている場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、2〜3歳のプレクラスでは、ピアノを上手に弾くことを最初の目標にはしていません。

この時期には、鍵盤に触れるだけでなく、

  • 歌う
  • 音楽に合わせて歩く
  • 手拍子を打つ
  • 打楽器を鳴らす
  • 高い音と低い音を聞く
  • 長い音と短い音を感じる
  • 絵や形を見分ける
  • 指先を使う
  • お話から場面を想像する

といった活動を組み合わせます。

音楽を演奏するためには、指を動かす力だけでは足りません。

音を聞き、違いに気づき、楽譜や鍵盤を見て、身体を動かし、どのような音にしたいかを考える必要があります。

そのため教室では、幼児期から一つの技能だけを急いで伸ばすのではなく、音楽に必要な複数の力を、遊びや対話を通して育てています。

アプリで音符読みをする人の手

「聞く力」は、ドレミを当てることだけではありません

幼児期から音楽を始める理由として、「絶対音感」という言葉がよく使われます。

絶対音感とは、基準になる音を先に聞かなくても、鳴った音の高さを音名で判断できる能力です。ザックリ言うなら、1つ1つの音の高さをマル暗記するようなもの。

絶対音感の獲得には、幼少期のトレーニングが関係すると考えられていますが、遺伝的な要因や、トレーニング方法、それ以前に言語環境なども関係していて、単純に「幼い頃から習えば身につく」とは言えないと思います。

また、絶対音感があることと、音楽的に豊かな演奏ができることは同じではありません。絶対音感を音楽能力全体の優劣として扱うような考え方にも、注意が必要だと思います。

南福島ミュージックルームでは、絶対音感の獲得だけをレッスンの目標にはしていません。

それよりも、

  • 音が上がったか、下がったか
  • 二つの音が同じか、違うか
  • 音が明るく感じるか、暗く感じるか
  • 音が重なったときに、どのように響くか
  • 音楽がどこへ向かって動いているか
  • 自分が弾いた音が、思っていた音と合っているか

を聞き取る力を大切にしています。これらは、音と音とを聞き比べて、関係性を聞き取る力、理解する力です。

絶対音感はトレーニングできる年齢が限られますが、関係性を聞き取る(相対音感)力は、就学後や大人になってからでもトレーニングが可能です。

さらに、この力は、旋律(メロディー)、和音、調性、楽曲構成を理解するための重要な土台になります。

幼児知育のパズル

早く始めるメリットは、準備に時間をかけられること

2〜3歳からレッスンを始める大きな利点は、難しい内容を早く教えられることではありません。

本格的に鍵盤演奏や楽譜の学習へ進む前に、準備の時間を十分に取れることです。

たとえば、

  • 先生の声に注意を向ける
  • 短い指示を聞いて動く
  • 動きをまねる
  • 順番を待つ
  • 道具を大切に扱う
  • 一つの活動が終わったら次へ移る
  • 分からないときに助けを求める
  • 音や活動に自分から興味を向ける

といったことも、レッスンを受けるための大切な土台です。

これらは、一度説明すればできるようになるものではありません。

その日の気分、疲れ、眠気、体調、発達段階、先生や場所への慣れ方によっても、できることが変わります。

プレクラスでは、子どもの成長を急がせません。成長に寄り添いながら、できる項目を少しずつ増やし、4〜6歳の導入レッスンにつなげていきます。

幼児知育のタングラム

教える順番は、一人ひとり違います

同じ2歳、同じ3歳であっても、子どもの様子は一人ひとり異なります。

すぐに入室できる子もいれば、保護者から離れて座れるようになるまで時間が必要な子もいます。

歌うことが好きな子、身体を動かすことが好きな子、黙ってじっくり観察する子、楽器の音に敏感な子もいます。

教室では、年齢だけを基準に内容を決めません。

その子が今、

  • 何に関心を持っているか
  • どのような方法なら理解しやすいか
  • 何に不安を感じているか
  • どの程度の時間なら取り組めるか
  • どの感覚を使うと参加しやすいか

を観察し、指導項目の順序、手法、教材を臨機応変に調整します。

全員を同じ型にはめるのではなく、その子が音楽と関われる入口を探すことが、幼児期のレッスンでは特に重要だと考えているからです。

幼児教具のはめ込み図形で遊ぶ女児

数分間の項目を組み合わせてレッスン

2〜3歳の子どもが、30分間ずっと同じ内容に集中することは・・まず現実的ではありません。

そのためプレクラスでは、数十秒〜数分間でできる小さな項目を組み合わせてレッスンしています。

歌詞唱、手遊び歌、リズム、鍵盤、打楽器、カード、パズル、お手玉、ボール、スケッチブック、身体表現などです。

それでも、

・前回は喜んで取り組んでいたのに、今回は見向きもしない

・以前は興味を示さなかったのに、今日は突然夢中になっている

こうした変化は、ごく普通に起こります。

その日の指導項目を全部こなすことよりも、その日の子どもの状態を見ながら、

  • 今日、この子は何を聞いたか
  • 何を見つけたか
  • 何を面白いと思ったか

を大切にします。

それぞれ違う表情の顔が描かれた5つのおもちゃ

「イヤイヤ」は、学べないという意味ではありません

2〜3歳頃には、自分の意思が強くなり、「やらない」「自分でやる」と主張することが増えます。

これは、音楽を学ぶ意欲がないという意味ではありません。

  • 自分で選びたい。
  • 自分の順番で試したい。
  • 今していることを中断したくない。
  • 知らないことに慎重になっている。

子どもの「イヤ」には、さまざまな理由があります。

そのため、無理に従わせるのではなく、参加しやすい形へ活動を変えます。

たとえば、

  • 子どもに二つの活動から選んでもらう
  • 子どもが先生役になる
  • 人形や物語を使う
  • 一回だけ試して終わる
  • 保護者が先に楽しんでみせる
  • できたかどうかより、気づいたことを言葉にする

といった方法です。

教室で大切にしているのは、「先生の言うとおりにできる子」にすることではありません。

子どもが自分から音に関心を持ち、試し、やり方を見つけていくことです。

家族の顔を描いた指

家庭では、練習より「一緒に音楽をする」

2〜3歳の子どもが、一人で決まった練習を続けることは困難です。

家庭では、「練習させる」と考えるよりも、保護者も一緒に音楽へ参加してください。

たとえば、

  • お風呂で手遊び歌を一回歌う
  • おやつの前に鍵盤を一つ探す
  • 音楽に合わせて一緒に歩く
  • 子どもに歌やリズムを教えてもらう
  • 人形を登場人物にして歌う
  • 今日聞こえた音について話す

といった短い活動で十分です。

大切なのは、長時間取り組むことではありません。

生活の中で音楽に触れる経験を繰り返し、

音楽は、誰かにやらされるものではなく、一緒に楽しめるもの

と感じられることです。

できない日があっても問題ありません。

疲れている日、眠い日、別の遊びをしたい日もあります。

幼児期の学びは、毎日同じ成果を積み上げる直線ではなく、行ったり戻ったりしながら少しずつ広がっていきます。

ビジョントレーニングの背景画像

発達効果を目的にしすぎない

音楽活動と、注意、記憶、言語、身体運動などとの関連を調べた研究はあります。

しかし、音楽レッスンを受ければ、知能、学力、社会性、情緒などが自動的に向上する、と断定することはできないと思います。

研究結果は、対象とされた年齢の幅や、訓練内容、期間、比較条件などによって異なるからです。

そもそも、音楽教育の価値を「音楽以外の能力が伸びるかどうか」だけで測る必要はない、と考えています。

  • 面白い音を聞いて笑った
  • 自分一人で音を出す時ドキドキした
  • 家族と一緒に歌った記憶
  • 自分でできることが増えた
  • 音楽で自分の気持ちを表せた

どれも、それ自体に価値があるものです。

南福島ミュージックルームでは、幼児期の音楽レッスンを、将来の成績や能力を先取りするためのものではなく、

子どもが音楽と出会い、自分なりの方法で関わり始める時間

と考えています。

ピアノの鍵盤を人差し指で押す幼児

3歳を過ぎてからでは遅いのでしょうか

遅くありません。音楽は、何歳からでも始めることができるからです。

開始年齢だけで、その後の演奏力や音楽との関係が決まるわけではありません。

4歳、6歳、小学生、中学生、大人、シニアでは、それぞれ異なる理解力、身体能力、経験があります。

成長してから始めた人は、言葉による説明も理解できますし、自分で目標を持って練習できると言う利点があります。

小さな頃に始めた人は、早く始めた分だけ長く経験を積み、音に親しんできたというメリットがあります。

重要なのは、

  • レッスンと練習の内容が、ご自分に合っていること
  • 進むペースに無理がなく、続けやすいこと
  • 自分で音を聞き、考え、表現しようとする意識
  • 音楽が嫌いにならないこと

です。

それぞれ違う表情の顔が描かれた5つのおもちゃ

2〜3歳から始めるレッスンで、教室が育てたいもの

2〜3歳から始めるレッスンの目的は、幼いうちに難しい曲を弾かせることではありません。

教室が育てたいのは、

  • 音に関心を向ける力
  • 人の動きをよく見る力
  • 聞いたことを身体で試す力
  • 音の違いに気づく力
  • 自分なりに表現する力
  • 分からないことや失敗も楽しむ探究心
  • 音楽を誰かと共有する楽しさ

です。

こうした土台が育つと、子どもはやがて、先生の指示を待つだけではなく、自分で楽譜を読み、自分の音を聞き、考えながら演奏する方向へ進んでいきます。

教室の目標は、早く弾ける子を作ることではありません。

子どもが成長したあとも、自分の力で音楽を学び、表現し、楽しめるようになることです。

2〜3歳のプレクラスは、その長い音楽生活の最初の入口です。


参考資料

  • 宮崎謙一「絶対音感を巡る誤解」『日本音響学会誌』69巻10号、2013年。絶対音感を一般的な音楽能力の高さと同一視することの問題などを論じています。
  • Center on the Developing Child at Harvard University, “InBrief: Executive Function.” 幼児期に発達する実行機能を、ワーキングメモリ、認知的柔軟性、自己制御の観点から説明しています。
  • Center on the Developing Child at Harvard University, “Executive Function Activities for 3- to 5-year-olds.” 歌、身体活動、リズムに合わせる遊びと実行機能との関係を解説しています。
  • Bailey and Penhune, “The relationship between the age of onset of musical training and rhythm synchronization performance.” 早期の音楽訓練と、その後の音楽・運動能力との関連を検討した研究です。ただし、開始年齢だけで結果が決まることを示すものではありません。

この記事について

この記事は、南福島ミュージックルームにおける長年の幼児指導経験と、幼児発達・音楽知覚に関する研究資料をもとに執筆しています。

子どもの発達や反応には大きな個人差があります。記事内の内容は、すべての子どもに同じ経過や効果を保証するものではありません。