脳と音楽の関係を表したイメージ図

脳の成長と音楽

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音楽教育が子供の成長に与える影響については、様々な研究がなされていて、近年では指導者セミナーでも取り上げられ、書籍やネット記事でも数多く目にします。今回は、音楽教育が子供の脳の成長に与える影響の中で、メリットを5つピックアップしてまとめてみました。

主なメリット5つ

1. 認知機能の向上

音楽教育は、認知機能を強化することが多くの研究で示されています。楽器を弾いている時や、楽譜を読んでいる時、子供達の脳では、前頭前皮質(前頭葉の前側)の領域が刺激を受けています。

前頭前野は、認知機能や実行機能、情動や動機づけ機能を担っていて、老化の影響が最も早く起こる部位としても知られています。

*脳科学辞典:東京都医学総合研究所 生理心理学研究部門 渡邊 正孝

前頭前野は、ワークングメモリーや、行動の計画、推論、行動の切り替え等も担っています。そのため、集中力の強化や、適切な判断と行動をする能力にも関わります。

また、カナダの研究チームが実施した大規模な調査で、楽器のレッスンを受けている子供は数学や読解力のテストでより高い成績を収める傾向がある、という研究結果もあります。

*WIREDのオンライン版で読むことができます。

2. 言語能力の発達

音楽教育は、言語能力の発達にも効果的です。音楽と語学は、脳の同じ領域を活性化させるので、音楽のリズムやメロディーを学ぶことで、音声の微妙な違いを認識する能力が高まり、言語の習得が促進されるからです。

そうした理由から、第二言語の習得が容易になるとも言われています。

3. 感情的な発達

音楽は、子供達がが自分や他人の感情を理解したり、表現したりする能力を高めるための強力なツールになります。

音楽を通じて自分の感情を表現したり、音楽の世界で他者の感情を想像して演奏したりすることで、共感能力も育まれます。共感能力は、社会的なスキルや感情コントロールの向上にも関わる能力です。

4. 社会的スキルの向上

音楽活動の中でも、アンサンブルや合唱は、協力やコミュニケーションのスキルを育む絶好の機会になります。

子供達は、合唱やアンサンブル演奏を通じて、お互いが協力し合うこと、共通の目標へ向かって努力をすることを学びます。こうした集団での経験は、チームワークやリーダーシップのスキルにも結びつきます。

5. 創造性の促進

音楽教育は、子供たちの創造性を引き出す手段になります。

自由な発想や、自由な表現を促すことで、発想力や創造力を育むことができます。その力は、新しいアイデアを生み出したり、独自の視点で物事を考えたり、やがてはゼロから生み出す力にも繋がります。

まとめ

今回取り上げたメリットは、音楽が単なる芸術的な活動を超えて、子供たちの成長に、広範囲の影響を与えることを示していると思います。

実際、教室でも、子供達が楽器の練習を通して、音楽以外でも発揮できるスキルを身につけていく姿を長年見てきました。

ですが、持っているだけのスキルは持ち腐れになります。学校の勉強や友達付き合いの中で、スキルの使い方や活かし方を学び、成長していくことが理想だと感じています。


この記事について

この記事は、40年近い現場での指導経験と、音楽・指導法の研究、神経発達症(旧名称:発達障害)支援の研鑽、シンポジウム登壇とフィードバック、関連書籍からの情報を基にして書いています。記事の内容は私見であることをご了承ください。古い記事は適宜更新し、今お役に立つ記事を心がけています。プロフィール