ピアノを弾いているシニア世代の男性

大人のレッスンと練習

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ピアノを弾く大人の手

大人レッスンのメリット

ピアノやエレクトーンのレッスンは、子供だけでなく大人にも、多くのメリットをもたらします。例えば‥

脳の活性化と認知機能の向上

「楽器の練習は認知症予防に効果がある」と耳や目にすることが増えましが、これは、演奏をすることで、脳の広範囲が刺激を受けるからです。

脳の中でも前頭前野(脳の前方)は、認知機能や実行機能、情動や動機づけ機能を担っていて、老化の影響が最も早く起こる部位としても知られています。

*脳科学辞典:東京都医学総合研究所 生理心理学研究部門 渡邊 正孝

楽器を弾いている時、人の体の中では、手指の運動だけでなく、視覚(楽譜や鍵盤の位置を見たり)、聴覚処理(弾いた音を聞いて判断したり)、といった様々な能力を組み合わせています。

また、1曲を弾き通す練習では、記憶力や集中力も必要です。楽譜を読んで弾いているだけでも、実はこれほど複雑なことをしているのです。

脳の認知機能が全般的に向上すると言われているのもこのためです。

ストレス解消やリラックス効果

音楽は感情の調整に役立ちます。

好きな曲を弾いたり、思いを込めて弾いたりする中で、日常のストレスが軽減される経験をした方は多いと思います。

気持ちを表現したことで「すっきりした」などの満足感も得られるので、忙しい生活を送る大人にとっては、心の平穏を取り戻す手段の1つにもなり得ます。

自己表現と創造性を発揮する

ピアノやエレクトーンを学ぶことは、新たな自己表現の手段を得ることにも繋がります。

誰しも時には、言葉にできない、言葉にならない思いを持つことがあるものです。そんな時、楽器の演奏は、今の感情やモヤモヤを言葉を使わずに表現できる手段になります。

思いを込めて弾こうとする過程で、創造性が刺激されたり、音楽表現の経験を深めることもできます。

音楽的教養の向上

レッスンでは、読み方や弾き方だけでなく、音楽理論や歴史も並行して学びます。新しい知識を得ることができるので、音楽的な理解が深まります。

理解が深まると、それまでとは違う視点で音楽を聴いたり、新たな視点を得ることにも繋がります。

音楽を聴く面でも、演奏する面でも、楽しみが広く深くなります。

社会的なつながりと自己成長

レッスンや練習を通じて、音楽仲間とのつながりが生まれることも大きなメリットです。

アンサンブルや連弾をする仲間を見つけたり、発表会などのイベント参加を通じて新しい友人ができると、音楽を通じたコミュニケーションが深まります。

仲間との演奏体験を通じて、自己成長の機会が増えて、日々の生活に新たな充実感が加わります。

健康的なライフスタイルの一環として

演奏は、精神的な健康だけでなく、身体的な健康にも良い影響を与えることがあります。

例えば、練習の日課を続けることで、手指の柔軟性を維持したり、脳の老化防止にもつながります。

また、深呼吸やリズムに合わせた動きは、リラクゼーション効果を高めることもできます。

音符を書くシニア女性の手

よくある自宅練習のお悩み

大人ならではの共通のお悩みを4つ取り上げて、原因を考えます。より充実した練習にするためには、先に原因を探って理解しておくことが大事だからです。

時間の確保が難しい

忙しいスケジュールの中で練習時間を確保するのは簡単ではありませんよね。

お仕事や家事が忙しい時は、無理に時間を作って楽器に向かっても、結局は集中できないまま終わったりします。

モチベーションの維持が難しい

楽器の練習は、何年も長期間にわたって続くものです。時にはモチベーションを維持することが難しくなることもあります。

いわゆる「波がある」という状態で、これは多くの方に起こり得ることです。

そもそもメンタルや体調には波がありますし、大人の場合は仕事や家事の状況にも左右されるからです。

技術的な壁に直面する

特に、初心者や久しぶりにレッスンを始めた方は「指が動かない」といった、技術的な壁に直面することがあります。

例えば、薬指が動かない、細かいリズム通りに動かない、右と左で違う弾き方ができない、という壁です。

練習が進まない

自宅での練習は1人で行うため、効率の悪い練習に陥りがちです。

どんな目的で、何を、どのように、どの程度まで弾けることを目標にするのか。これらが不明確だと、練習の質が落ちたり、進捗が落ちたりします。

結果、いつも同じ部分でミスをする、いつも同じ部分で止まる、毎日練習しているのにリズム通り弾けない、といった状態に陥りやすくなります。

正装でピアノを弾く男性

自宅練習のお悩み[解決策]

これらのお悩みに、解決策として4つご紹介します。

①スケジュール管理と考え方を変える

練習時間を日常のルーティンに組み込むのも効果的です。

例えば、朝のコーヒーの前後に短い練習を取り入れる、お風呂の前に弾く、というように日常の生活習慣に組み合わせてしまう方法です。

これは教室の古参生徒様たちが行なっている方法で、たとえ短時間でも毎日続けることでスキルが向上します。

自宅では集中して弾けない、練習が難しい状態の方は、レッスンでご一緒に練習しましょう。実際、集中して弾けるのは教室だけ、という方達もいらっしゃいます。

たとえ週1回の練習でも、教室で適切な指導を受けながら集中して練習することで、1曲また1曲と教本を進めています。

具体的な目標を決めてみる

これは、練習に対するモチベーションを維持するためにも効果的です。

例えば「1か月以内にこの曲を弾けるようになる」とか「2ヶ月に1回は新しい曲に挑戦する」などの目標を持つと、やる気が持続しやすくなります。

発表会や、演奏動画の投稿なども、時期を区切ってモチベーションを上げる方法の1つです。

練習は段階的に進める

レッスンでは、難易度が易しい曲から順に、少しずつ段階的に難しいものに進みますよね。

自宅練習も同じ段階を踏んで進んでください。ご自分で選んだ楽譜を練習したいときも同様です。

今取り組んでいる技術的なエクササイズを消化していない段階で、ステップアップすると、力不足で頭打ちになってしまいます。

レッスンで、先生からフィードバックを得ることでも課題を明確にすることができると思いますので、改善点に集中して取り組んでみましょう。

練習方法の工夫

ポモドーロ・テクニック

アプリなどのタイマーで、25分経ったらアラームが鳴るように準備して、25分間練習をしたら5分間休憩、また25分間練習したら休憩、というルーティンを繰り返す方法です。

演奏を撮影する

スマートフォンでご自分の演奏を撮影してみましょう。どこかに投稿するわけではないので、ミスをしても録画を止めずに弾き続けます。

まず気になる部分の部分練習を撮りましょう。1回撮ったら録画を再生してじっくり確認します。

部分練習の段階が完了したら、通奏(始めから最後まで通して弾く)へ進みます。ある程度、通して弾けるようになったら録画しましょう。1回撮ったら録画を再生してじっくり確認します。

弾いている最中は、意外と聴き逃している音があることに気づくと思います。

体全体を撮影しておけば、手首や肘の動きだけでなく、首や背中、足の置き場所や角度、椅子の位置なども確認できるので、演奏に影響している原因が見つかることも多いです。

自宅練習は1人で行うことが多いので、客観的な視点で確認できなのは仕方ないことなのですが、演奏動画を活用することで解決が可能になります。

大人の生徒様がピアノやエレクトーンのレッスンを受けることは、認知機能の向上や、ストレス解消、自己表現の機会といった多くのメリットがあります。

自宅練習は、家事やお仕事も含めた時間管理、目標設定、練習方法の工夫によって、効果的に練習が進められます。

楽器のレッスンは健康維持の一環としても効果的だと思います。楽器が、豊かなライフスタイルを築くお手伝いになれば、指導者として大変嬉しく思います。


この記事について

この記事は、40年近い現場での指導経験と、音楽・指導法の研究、神経発達症(旧名称:発達障害)支援の研鑽、シンポジウム登壇とフィードバック、関連書籍からの情報を基にして書いています。記事の内容は私見であることをご了承ください。古い記事は適宜更新し、今お役に立つ記事を心がけています。プロフィール