エレクトーンを弾く手

エレクトーンってどんな楽器?

投稿日

加筆修整2026-8-2

エレクトーンは、ヤマハが開発・製造している電子オルガンです。

上鍵盤、下鍵盤、足鍵盤の3段の鍵盤を使い、両手と足で複数のパートを演奏します。

弦楽器、管楽器、ピアノ、オルガン、ギター、シンセサイザー、民族楽器など、さまざまな音色を使うことができ、リズムや伴奏機能も備えています。

一人でオーケストラのような厚みのある演奏をすることもできれば、他の楽器とアンサンブルすることもできます。

南福島ミュージックルームの体験レッスンでは、

「教室に来て初めてエレクトーンを見ました」

という方も珍しくありません。

「ピアノとは何が違うの?」
「手も足も使うから難しそう」
「機械が全部演奏してくれる楽器なの?」

そんな疑問を持つ方のために、この記事では、エレクトーンの特徴と、演奏するとどんな音楽経験ができるのかをご紹介します。

2台のエレクトーンで演奏している人たち

3つの鍵盤で、たくさんのパートを演奏する

上鍵盤・下鍵盤・足鍵盤

エレクトーンには、

  • 上鍵盤
  • 下鍵盤
  • 足鍵盤

の3つの鍵盤があります。

一般的には、上鍵盤を右手、下鍵盤を左手、足鍵盤を左足で演奏します。

曲によっては右足で足鍵盤を弾いたり、右足でエクスプレッションペダルやフットスイッチを操作したりすることもあります。

それぞれの鍵盤で役割を分ける

上鍵盤では、メロディーやリードパート。

下鍵盤では、和音や伴奏。

足鍵盤では、ベースライン。

というように、それぞれ違う役割を受け持つことができます。

たとえばオーケストラ曲なら、

右手でバイオリン、
左手でホルンや弦楽器の伴奏、
足でコントラバス。

というように、複数の楽器の役割を一人で演奏できます。

ヤマハの現行STAGEAシリーズでも、3段鍵盤を使い、複数の音色を組み合わせて豊かなアンサンブルを作れることが特徴として紹介されています。

自動伴奏も、演奏の一部として使う

エレクトーンには、リズムや自動伴奏を鳴らす機能もあります。

初心者の頃から、リズムや伴奏に合わせて演奏できるため、一人でもアンサンブルのような音楽を経験できます。

ただし、教室では、

「豪華な伴奏が鳴っているから、それで完成」

とは考えません。

自分が弾いている音を聞く。
伴奏とのバランスを聞く。
自分が音楽のどの役割を担当しているのかを知る。

自動機能も、演奏者が音楽を作るための一つの道具として使います。

2台のエレクトーンで演奏している人たち

音色は、選ぶだけではなく作れる

さまざまな楽器の音を選べる

エレクトーンには、

  • 弦楽器
  • 金管楽器
  • 木管楽器
  • ピアノ
  • オルガン
  • ギター
  • ベース
  • 打楽器
  • 民族楽器
  • シンセサイザー
  • 人や動物の声
  • 生活音

など、多くの音色が収録されています。

機種によって収録数や機能は異なりますが、非常に多くの音色やリズムを組み合わせて演奏できます。

同じ音色でも、弾き方で表情が変わる

エレクトーンは、

「バイオリンのボタンを押したら、あとは同じ音が鳴る」

という楽器ではありません。

鍵盤を弾く速さや、押したあとの圧力など、タッチによって音量や音質を変化させることができます。

  • 管楽器の息遣い
  • 弦楽器の擦れる音
  • ギター特有の奏法

など、その楽器ならではの特徴や、細かな表情を加えることができます。

このとき大切なのは、具体的にどう弾けばよいのかを考えることです。

  • ここをバイオリンで弾くなら、上げ弓下げ弓はどうするだろうか?
  • 管楽器でこのフレーズを吹くなら、どんな息使いだろうか?
  • ここをピアノで弾くなら、どんなタッチが似合うだろうか?

音色を選ぶことで、演奏の仕方まで考えることになります。

自分のイメージに合わせて音を作る

エレクトーンでは、内蔵音色の設定を変えたり、複数の音を重ねたり、エフェクトを加えたりして、曲に合わせた音色を作ることもできます。

「この曲は、もっと柔らかい弦の音にしたい」

「ここだけ、遠くから聞こえるようにしたい」

「この場面では、少し不思議な音にしたい」

自分で作った音色なら、自分のイメージにグッと近づけることができます。

発表会で演奏する高校生

全身を使いながら、音楽全体を聞く

両手両足が、それぞれ違う役割を担う

エレクトーンを弾いている人を見ると、

右手は上鍵盤、左手は下鍵盤、
左足はペダル鍵盤、右足は操作ペダル

というように、手足がバラバラに動いていることが分かります。

演奏中は、鍵盤を弾くだけでなく

  • 楽譜を見る
  • 自分の音を聞く
  • リズムを聞く
  • 音色の変化を聞く
  • 操作ペダルを動かす
  • スイッチを操作する

といったことも演奏の中に含まれます。

確かに、かなり忙しい楽器です。

ですから、練習の進め方が重要になります。

一つずつ分けてから、組み合わせる

エレクトーンの練習は、

右手だけ。
左手だけ。
足だけ。
右手と足。
両手。
最後に全体。

というように、曲の内容や生徒の習熟度に応じて、練習段階を分けて進めます。

決して、気合いや回数勝負だけでは進めません。

重要なのは

  • それぞれのパートの役割を理解すること
  • パート同士がどう絡んでいるかを掴むこと
  • 絡みによって音楽がどんな響きになっているかを聞きとること

ここをおろそかにすると、「機械に弾かされている」状態になります。

どんなに多機能で優秀な楽器であろうとも、主役は常に「弾く人」です。

自分が鳴らしている音楽全体を聴きながら、全身を使って弾く。

これがエレクトーン演奏の醍醐味とも言えます。

マルチタスク能力が上がる?

エレクトーン演奏は、複数の情報、複数の動作を組み合わせて弾いています。

だからと言って「マルチタスク能力が、必ず高くなる」とまでは言えないと思います。

一般的に、人間は複数の認知課題を完全に同時処理することが得意ではありません。

そのため、同時処理というよりも注意を切り替えながら処理している場合があります。

エレクトーン演奏に求められるのは、何かの能力を増やすことではなく

「複数のパートを聞きながら、1つの音楽としてまとめる演奏力」

だと考えています。

自分のパートだけでなく、全体を聞く

エレクトーンは、自動伴奏や多くの音色が鳴るので、自分が弾いている音だけ聞いていては、音楽全体を整えられません。

  • メロディーが聞こえているか。
  • 伴奏が大きすぎないか。
  • ベースが音楽を支えているか。
  • リズムと自分の演奏が合っているか。

複数の音を、1つの音楽として聞く。

これは、エレクトーンを学ぶ上で、とても重要な力です。

弾くだけでなく、創ることも楽しめる

音色を選ぶところから表現が始まる

たとえば、

「雨の場面を音にしてみよう」

と考えたとします。

ピアノの音を使うのか。
ベルの音を使うのか。
シンセサイザーで不思議な響きを作るのか。

同じ旋律でも、使う音色によって印象は大きく変わります。

幼児でも、音色を選ぶところから自分のイメージを音にする経験ができます。

作曲や編曲にも使える

エレクトーンは、

  • 作曲
  • 編曲
  • 即興演奏
  • 音色作り
  • リズム作り

とも相性のよい楽器です。

教室でも、年齢にかかわらず創作活動を取り入れています。

決められた楽譜を弾くだけでなく、

「自分なら、どうしたい?」

を音で試します。

「蚊」という曲

これまで子どもたちが作った作品の中に、小学校低学年の生徒が作った「蚊」という曲がありました。

蚊が飛んでくる。
羽音がする。
人が蚊を追う。
最後に蚊を両手で叩く。

そのストーリーを表現した曲です。

曲の最後で、本当に両手で空中を両手で叩いたのです。

大人が思いつかないような発想でした。

教室では、こうした、

「自分の中にあるものを、音へ変える」

経験を大切にしています。

技術は、そのために使います。

創造力を「右脳」で説明しない

加筆修整をする前の記事では、創造活動と「右脳」を結びつけて説明していました。

現在では、創造性を単純に「右脳の働き」と説明するのは適切ではありません。

そこでこの記事では、

「エレクトーンを弾けば創造力が向上する」

とは書きません。

ただし、

音を選ぶ。
組み合わせる。
試す。
聞き比べる。
自分のイメージへ近づける。

こうした創作活動そのものを、エレクトーンで豊富に経験できることは、この楽器の大きな魅力です。

エレクトーンELS-03XR,YAMAHAグランドピアノ,YAMAHAハイブリッドピアノ,D-DECK,

エレクトーンは難しい楽器?

「手も足も使うから難しそう」

初めてエレクトーンを見る方から、よく聞く言葉です。

確かに、上級曲では両手両足を使い、音色やリズムの操作も加わります。

完成した演奏だけを見ると、

「こんなにたくさんのことはできない」

と思うかもしれません。

しかし、初心者がいきなりその状態から始めるわけではありません。

最初は、一つの音から

幼児や初心者なら、

  • リズムや伴奏に合わせて、一音だけ弾く。
  • 伴奏に合わせて、メロディーだけを弾く。

というところから始められます。

慣れてきたら、右手、左手、とバラバラに動かしてみます。

足が届く場合は、足鍵盤を1つだけ踏んでみます。

こうして一つずつ増やしていくので、

最初から3段鍵盤全部を使うわけではありません。

軽い鍵盤は「メリット」の一つ

エレクトーンの鍵盤は、アコースティックピアノとは構造やタッチが異なります。

比較的軽い力でも音を出すことができます。

そのため、指が弱い小さな子どもや、強い打鍵が負担になる大人の方にも、取り組みやすい楽器です。

指が弱い幼児期でも両手奏が可能になるので、幼いうちからメロディーと伴奏の経験ができます。

さらにタッチによる音量・音質の変化も、圧力の強さやかけ方を自分で設定できるので、無理なく楽しめます。

作編曲コンペで演奏する男の子

エレクトーンで育てたいのは、音楽を組み立てる力

機能をたくさん使うことが目的ではありません

エレクトーンには、非常に多くの機能があります。

  • 音色
  • 自動でなり続ける打楽器
  • 自動伴奏
  • エフェクト
  • 音を変化させるタッチコントロール
  • 録音
  • 音色やリズムの切り替え
  • 弾き歌いのためのマイク入力

子供達に任せると、たくさんの音色を使い、様々な機能を使いたがります。

興味津々で「やってみたくて仕方ない」状態です。

やがて、どんな音色や機能があるかを知り始めると、

「何が必要か」

を考え始め、選ぶようになります。

そこで必要になるのが、イメージ力とセンスです。

まず音楽があり、そのために機能を使う

レッスンでは、

  • この曲はどんな雰囲気、ストーリーなのか
  • 一番大切にしたいのはどこか
  • 聞く人に何を伝えたいのか
  • どんな音ならイメージに近づくのか

を具体的にするための時間を持ちます。

  • イラストに描く
  • 言語化する、お話をつける
  • 色や温度、触感、味などにたとえてみる
  • 喜怒哀楽を想像してみる

そのあとで、必要な音色や機能を選びます。

機械に音楽を作ってもらうのではなく、

あくまでも演奏者が音楽を考え、そのために機械の力を使う。

この順番を大切にしています。

一人で音楽全体を作る

エレクトーンでは、メロディーだけでなく、

  • 伴奏(ハーモニーなど)
  • ベース
  • 音色
  • リズム(打楽器)
  • 音量のバランス
  • 音楽全体の流れ

まで、自分で考え、作ることができます。

音楽ジャンルに関わらず、です。

一人の演奏者が、奏者でありながら、編曲者や指揮者のような視点も持つことになります。

ですから私は、エレクトーンを「たくさん音が出る電子鍵盤」ではなく、

一人で音楽全体を組み立てて表現できる楽器

だと考えています。

南福島ミュージックルームでは、エレクトーンの使い方、音色の作り方も指導しますが、目的は機能を覚えることではありません。

楽譜を読み、音を聞き、自分で考え、自分のイメージを音へ変える。

そして、少しずつ自分の音楽を作れるようになることを目指しています。


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年代別のレッスンや練習については、記事一覧からご覧いただけます。エレクトーンのレッスン内容、料金、予約方法については、レッスン案内をご覧ください。

[レッスン案内]

参考資料

  • ヤマハ エレクトーン 製品情報・仕様
    3段鍵盤、音色、タッチ機能、ペダル、スーパーアーティキュレーションボイスなど、楽器の機能確認に使用。
  • ヤマハ音楽研究所 ON-KEN SCOPE「脳画像、光るだけでは意味がない。」
    脳画像で活動が見られることと、その部位の能力向上を直接結びつけることはできない、という脳研究の読み方について参照。

この記事について

この記事は、南福島ミュージックルームでのエレクトーン指導・演奏経験と、ヤマハが公開している製品情報、音楽と脳に関する研究解説をもとに執筆しています。

エレクトーン演奏には、複数の音や動作を扱う、音色を聞き分ける、全身を使う、作曲や編曲を行うなど、さまざまな音楽活動が含まれます。

ただし、それらの活動から特定の認知能力、運動能力、心理的効果が必ず向上すると断定するものではありません。