周囲に聞こえないように演奏動画を撮る/ご相談への回答

ピアノ、グランドピアノ、カメラ、オンラインレッスン

加筆修整2023-1月

『演奏が周囲に聞こえないように撮影したいです。オーディオインターフェースを使ったのですが、ヘッドホンから音が聞こえません。どうしたら良いですか?』

意外に多い?「ヘッドホンから音が出ない」というお悩み。原因はこれ。

というお悩みが、教室のLINEやホームページに続いて寄せられました。1人で撮影に挑戦した教室の生徒さんからも同じご相談をいただいたことがあります。原因はこの3つでした。

  • 接続する場所が違う
  • 用途に合わない道具を使っている
  • 機材側の設定が違う

道具に初期不良があったり破損させてしまったわけではないので、簡単な方法で解決できました。

道具の種類、接続、撮影パターンまで、拡大画面付きでご説明。

初めてのオーディオインターフェース、見慣れないケーブルやアダプター、様々なケーブル、道具がゴチャゴチャあるので、ちょっとした見落としや勘違いは起こりやすいと思います。

そこで今回は、初めてオーディオインターフェースを使う方たちが、記事を見ながらゆっくり作業できるよう、道具の種類から使い方までを拡大画像付きで書いてみます。

  • 接続のしかたが分からない
  • どんな道具を使うのか分からない

という方向けの内容です。

オーディオインターフェースは、ご相談者全員がお使いだった behringer(ベリンガー)のUCA202を使って進めます。

音が聞こえない原因だった部分は、色付き文字にしています。お役に立てれば幸いです。

❶使う道具/電子ピアノ、エレクトーンの場合

1. 楽器(外部出力がある電子ピアノ、エレクトーン)

電子ピアノは、外部出力がある機種を使います。外部出力の見た目は、ケーブルを挿すための「穴」です。この挿しこみ口は「ジャック」「♀メス端子」などと呼ばれます。

ケーブルの先は「プラグ」「♂オス端子」などと呼ばれ、ジャックもプラグも様々な種類があります。

今回は、一般的によく見る差し込み口の「AUX OUT」を例にして進めます。

(AUX はAuxiliaryの略で、そのまま「エーユーエックス」と呼んだり「オークス」と呼んだりします)

下の画像は教室にあるハイブレッドピアノです。右側に2つ並んでいる丸い穴がAUX OUTです。

電子ピアノ、ジャック、差し込み口

下の画像はエレクトーンです。ヘッドホン挿しこみ口の奥に6つの挿しこみ口が並んでいます。「AUX OUT」と表示されているうちの黒い方真ん中に2つ並んでいる丸い穴を使います。

エレクトーン、差し込み口、端子

どちらの画像も、左の穴にはL/L+R、右の穴にはRと表示されています。今回は左と右、両方に1本ずつケーブルを挿す方法で進めます。

AUXには、 INとOUTがあります。今回は楽器の音を外へ出すので「AUX OUT」を使います。

AUXに挿せるプラグの大きさは、マイクロ、ミニ、フォンの3サイズです。今回はエレクトーンのヘッドフォンに多い「フォン」サイズのプラグを挿します。電子ピアノ画像(教室のハイブリッドピアノ)のAUX OUTも「フォン」のサイズです。

多くの電子ピアノには外部出力があると思います。外部出力の種類と挿せるプラグのサイズは、取扱説明書で確認するのが一番確実です。場所は機種によって違います。本体の背面や鍵盤の下などをご確認ください。

2. オーディオインターフェース

ご相談者全員が、behringer(ベリンガー)のUCA202をお使いでした。初めて使う方に好まれているエントリー機なので、今回はこれを使って進めます。

中央のロゴを正面にして見たところです。手前中央のヘッドフォンのマークがある穴(ステレオミニのフォンプラグ用)と、右端のギザギザした黒いホイール(ボリューム)を使います。

オーディオインターフェース、四角、銀色

下の画像は反対側から見たところ。黒いケーブルは本体に直に付けてあるので外せません。

オーディオインターフェース、背面、端子、USB

赤と白の挿しこみ口は「RCA」と呼ばれるメス端子です。真ん中「IN PUT」の赤と白を使います。

右端の小さな黒いスイッチは、モニターON,OFFを切り替えます。これをONにしておいてください。

3. オーディオケーブル

ケーブルの先端部分は、♂とか「プラグ」とか呼ばれています。今回は1本のケーブルに2種類のプラグがついたものを使います。

フォン-ピン、ケーブル、オーディオ

下の画像は1本のケーブルの右端と左端をアップで写したものです。左側のプラグは「ピン」とか「RCA」と呼ばれています。今回は見比べやすいように金色のピンを使用していますが、他の色もあります。

ケーブル、端子、プラグ、フォンプラグ、RCAプラグ

右のプラグは「フォン」です。黒い線が1本あるのは「モノラルフォン」、黒い線が2本あるのは「ステレオフォン」です。今回はモノラルフォンを2本使う方法で進めます。

4. スマートフォンの充電アダプタとケーブル

スマートフォンの充電に使う電源ケーブルやアダプターをご用意ください。ケーブルは細いコードの部分、アダプタは左側のコロンとした四角い部分です。コンセントに挿せる形をしていますね。

スマートフォン、充電ケーブつ、黒い文字

behringer(ベリンガー)UCA202はスマホから電気をもらいながら動きます。そのためスマートフォンがパワー不足にならないように、給電しながら撮影をします。

5. スマートフォンに挿すアダプタ

スマートフォンの差し込み口がLightningならLightningのアダプタ、USBのtype-Cならtype-Cのアダプタを選びます。

スマートフォン、アダプタ、ケーブル、矢印、白い文字、演奏動画

下の画像は反対側をアップで写したものです。必要なのは、USBケーブルtype-Aを挿せる四角い穴(左側)と、スマートフォンの充電ケーブルを挿せる穴(右側)です。

Lightning、アダプタ、スマートフォン

画像のアダプタは「Apple Lightning – USB 3カメラアダプタ」、iPhoneで使います。Apple公式で購入しました。

6. ステレオミニプラグのヘッドフォン

エレクトーンのヘッドフォンのプラグよりも細い、ステレオミニプラグのヘッドフォンを使います。

ヘッドフォン、プラグ、ケーブル

画像の太い方、フォンプラグのヘッドフォンをお持ちの方は、ステレオミニプラグに変換するアダプターをつけてサイズダウンすれば挿すことはできます。*音質や安定感は選んだアダプターに依存するのでここでは触れません。

7. フォンアダプタ

画像のような、エレクトーンに挿すヘッドホンプラグと同じ太さのアダプタを1本使います。お持ちでなければ余分なヘッドホンで構いません。プラグ部分がフォンのサイズであれば使えます。

アダプタ、フォンプラグ、黒い文字

8. 三脚など

撮りたい角度にスマホを固定できますし、大切なスマホを破損させないためにも大切な道具です。しっかり固定しておけば演奏に集中できます。

手元が暗い場合は照明道具も検討してみましょう。三脚の雲台に取り付けられる小型タイプもあります。下の画像、左側のスマートフォン上にある黒く四角い物が照明です。

三脚、スマートフォン、照明、黒い機材

楽譜用ライトや小型の卓上スタンドでも代用できますが、置き場所と光の向きにご注意を。

三脚やアームの選び方

試し撮りしながら撮りたい角度を決めておく

手持ちスマホでざっと試し撮りをして、お好みのカメラ位置を見つけておきます。スマホを縦に置くか横にするか、両方必要か。演奏者を横から撮るのか、上から撮るのか。カメラ位置に応じて、必要な三脚の高さや、スマホを固定する角度の見当がつくので、道具が選びやすくなります。

スマホを固定する部分をチェック

幅何センチのスマホまで掴めるのかを確認してください。スマートフォンにカバーを着けている場合は、カバーも含めた幅・厚みを調べます。特に手帳型のカバーは要注意です。カバーの蓋部分を背面に折り返して撮影するため、厚みが倍増します。

スマホのサイドボタンが干渉する場合もあります。スマホを多少ずらしても固定できるものを選ぶと無難です。

スマホ固定部分の「下」をチェック

接続したアダプターが邪魔になって、スマホを縦に固定できない場合があります。スマホの角度や向きを変えて、アダプターが干渉しない角度に固定できれば大丈夫です。(上の画像、左側の三脚)スマホを掴む部分がどの程度回転できるのかもチェックしておくと無難です。

まとめ

スマホ本体+カバーの幅・厚み・重さを余裕をもって掴み固定できる物、スマホの角度が変えられる、または自由に回転できる物を選ぶと安心です。

❷接続のしかた/画像と見比べながらゆっくり作業を

1. オーディオインターフェースにオーディオケーブル(RCAプラグ)を挿す

先に、目印をつけておくと便利です。片方のケーブルに赤いビニールテープや布製のヘアゴムなどを巻いて目印にしてください。

次にオーディオインターフェースのINPUTを見てみましょう。R赤、Lに白い色がついています。

オーディオインターフェース、黒いケーブル、木の机

赤い目印をつけたケーブルのRCA(ピン)側をしっかり持って、オーディオインターフェースの INPUT (R)赤い穴に挿し込みます。無印のケーブルも同じように、INPUTのL(白い穴)に挿しこみます。

RCAピンは花弁が芯を囲んだような形です。少し力を入れないとキッチリ入らないかもしれません。きちんと奥まで入っているかを確認してください。

オーディオインターフェース、ケーブル、プラグ、差し込み口

左上のモニターON、OFFスイッチはONにしてください。IN PUTから取り込んだ楽器の音をヘッドホンで聞けるようになります。

2. オーディオインターフェースのUSBケーブルをアダプタにをつなぐ

UCA202の本体から出ているUSBケーブルはtype-Aです。全体は長方形で、内部を覗くと半分は白い物で塞がっていて、もう半分は空洞に見えます。

オーディオインターフェース、ケーブル、USBケーブル、type-A、手指、白い文字

これをアダプタ側のUSB type-Aに挿します。アダプタ側の四角い穴を覗くと、上画像のケーブルと同じように半分は空洞、半分は塞がっています。
空洞に塞がっている部分をはめ込むように合わせて、ピッタリ挿してください。

Lightningアダプタ、USB-A、白、黒、矢印

3. スマホの電源ケーブルをアダプタにつなぐ

2.のアダプターにスマートフォンの電源ケーブルを挿します。電源タップなどのコンセントに挿せば充電できる状態です。iPhoneの場合は、電源ケーブルと電源アダプター(画面上部のコロンとした形のもの)を使います。

充電ケーブル、Lightningアダプタ、USB、type-A、矢印

ここまで挿し終えた状態です。

オーディオインターフェース、充電ケーブル、USBケーブル、Lightningアダプタ

4. ケーブルの反対側(モノラルフォン)を楽器に挿す

電子ピアノやエレクトーン本体のAUX OUT に挿します。

電子ピアノ、オーディオインターフェース、黒いケーブル、配線、矢印

オーディオインターフェース側のL(白)に挿している無印のケーブルは、楽器のL/L+Rに挿します。

オーディオインターフェース側のR(赤)に挿した赤テープのケーブルは楽器のRに挿します。

LとL、RとR、赤と赤、などと覚えておきましょう。

電子ピアノ、差し込み口、ケーブル、フォンプラグ

エレクトーン側の差し込み口は、ヘッドホン差し込み口の奥にあります。黒い布が張られたスピーカーのすぐ手前です。電子ピアノ同様、AUX OUT に挿してください。

エレクトーン、ケーブル、外部出力、矢印

ここまで挿し終えた状態です。

電子ピアノ、オーディオインターフェース、充電ケーブル、アダプタ、Lightning、USB

5.ヘッドホンをオーディオインターフェースに繋ぎます。

楽器ではなく、オーディオインターフェースに挿します接続ミスで最も多かった原因がここでした。つい、いつもの場所に挿したくなりますものね^^;

電子ピアノ、オーディオインターフェース、充電ケーブル、アダプタ、Lightning、USB、ヘッドホン

ヘッドホンのマークがある丸い穴に挿しこんでください。右側はボリュームです。ゼロになっていると聞こえません。

 オーディオインターフェース、ヘッドホン、ミニプラグ、ステレオ、ケーブル

ここまでの状態。右上が黒くて見えにくいですが、黒いケーブルがピアノ本体に接続されています。中央の白いアダプターにスマートフォンを繋いで、先に進んでください。

電子ピアノ、オーディオインターフェース、充電ケーブル、アダプタ、Lightningアダプタ、ヘッドフォン、配線

❸撮影の準備/三脚、電源タップ、照明、カメラ位置を決める

電源タップの場所、三脚の高さ、カメラ角度、弾く場所からスマホの録画ボタンまでの距離など、それぞれの距離や位置関係を今のうちに整えておきます。

まずスマートフォンの電源ケーブルをコンセントに繋いで、ケーブルの長さを確認します。三脚の高さの分も必要になるので、短すぎて届かないこともあり得ます。

電子ピアノ、オーディオインターフェース、充電ケーブル、アダプタ、Lightningアダプタ、ヘッドフォン、配線、電源タップ

下の画像、スマホの高さは椅子に座った大人の目線くらいです。

電子ピアノ、オーディオインターフェース、充電ケーブル、アダプタ、Lightningアダプタ、ヘッドフォン、電源、三脚、演奏動画撮影

オーディオインターフェースの黒いケーブルもそれほど長くないので、演奏者の割と近くに置くことになります。ケーブル等がカメラに映り込まない置き場所を見つけておきましょう。

❹電源/電源タップを使っている方は電源をONに。

今回のオーディオインターフェースは、スマホから自動的に電気をもらって動くタイプなので、電源スイッチはありません。スマホに繋げば自動的に電源ONになります。

もし電源が別途ON,OFFできるオーディオインターフェースを使う時は、電源を入れたり切ったりする順番がありますので、ご参考までに。

楽器、オーディオインターフェース、パソコン、電源、順序

❺最終確認をしてから撮影へ/演奏に集中できるように

演奏動画は、道具や使い方よりも、演奏に集中できる環境が何より大切。少しでも納得のいく演奏を残したいですものね。安心して演奏に入れるよう、ここで最終確認をしておきましょう。面倒でしたら下記だけでも確認を!

道具を確認する

アダプターの種類、ケーブルのプラグ、ヘッドホンのプラグは、適合するものを選んでいること。

接続を確認する

LとR、AUX OUTとAUX IN、ヘッドホンをオーディオインターフェースに挿していること。

設定を確認する

オーディオインターフェースのモニタースイッチ(小さな黒いボタン)をONにしていること。

オーディオインターフェースのボリューム(黒いギザギザ)を上げていること。

❺-1 撮影/鍵盤を上から撮影したいときは

鍵盤の真上でスマホを固定できるアームがあると便利です。

アーム、スマートフォン、ケーブル、アダプタ

アームには、置き型ではなくデスクを挟んで固定するクラップタイプもあります。挟む部分にクッションを噛ませれば、譜面台を傷つけずに挟むことも可能です。(画像左側)

ピアノ、エレクトーン、アーム、スマートフォン、演奏動画、撮影、鍵盤

注意するのは重さ、何グラムまで固定できるかです。スマホだけでなく、アダプター、ケーブルなどの重さも加わるので、しっかり固定できる物を選びます。

❺-2 複数人の演奏を撮影したい時は

エレクトーン、複数、エッm騒動が、黒い文字、機材

上の画像は、エレクトーン2台のアンサンブル動画から切り出した画像です。曲の冒頭でパーカッションも入ります。使っている道具は

  • エレクトーンまたは電子ピアノ*
  • スマートフォン
  • コンデンサーマイク
  • ヘッドホン
  • ミキサー(オーディオインターフェース)
  • ヘッドホンアンプ
  • スマートフォンに挿すアダプター
  • それぞれを繋ぐケーブル

などです。使用しているオーディオインターフェースは、今回取り上げたベリンガーではありません。ミキサーとして使えるタイプです。エレクトーン2台分のケーブルとマイク2本を挿すので、複数の音を合わせる時に使う「ミキサー」と呼ばれる物を使用しています。

2人で弾いているのでヘッドホンも2本必要です。そこで使用しているのがヘッドホンアンプです。複数のヘッドホンを挿すことができます。比較的安価なものを使っていますが、それぞれのヘッドホン音量を個別に調節できるので、使い勝手が良いです。

❺-3 アコースティックピアノで撮影したい時は

今回のテーマからは外れますが、アップライトピアノやグランドピアノの場合もご質問をいただいたので加えておきます。

アップライトピアノやグランドピアノには、電子ピアノやエレクトーンのように外部出力できる機能がないので、マイクで音を拾います。そのため演奏は周囲に聞こえますし、エアコンなど周囲の音も拾いやすくなります。なるべく静かなお部屋で撮影しましょう。

スマートフォンで撮影する時のマイクは、

  1. スマホ内蔵のマイク
  2. スマホに直接挿して使う小型マイク
  3. マイクスタンドやアームに固定して使うマイク

があります。2と3は「コンデンサーマイク」という種類のマイクを使うことが多いと思います。スタンドやアームを設置する場合は、そのためのスペースも必要です。

画像のように、そばにデスクや棚がある場合は、挟んで固定するタイプのアームも使えます。撮影中も収納時も、置き型のマイクスタンドより省スペースで済みます。(ピアノの蓋などに取り付けるアームもありますが大変高価な物が多いのでここでは省きます。)

マイク選びも大切ですが、設置する位置も重要です。何度か試し撮りをしながらイヤホンかヘッドホンで聞き、最良と思われるマイク位置を決めます。その後で撮影本番に臨むと演奏に集中できると思います。

まとめ

今回は、behringer(ベリンガー)のUCA202を使って、ピアノやエレクトーンの演奏が周囲に聞こえないようにスマホ撮影する時の、道具の選び方、接続のしかた、撮影方法を注意ポイントとともにご紹介しました。

合わせて、鍵盤の上から撮る方法、アンサンブル演奏の撮影、アップライトピアノやグランドピアノで撮影する場合も加えてみました。

演奏動画は、ご自分の練習記録にも、お子様の成長日記としても素晴らしいものだと思います。月に1本投稿する、と決めてモチベーションに繋げている方もいらっしゃいます。

せっかく購入した道具たち、どんどん使ってお楽しみくださいね。素敵な演奏がたくさん撮れますように!

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