楽譜を指さす手

リズムを正しく読んで弾くには

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リズムを正確に演奏するためには、前頭前野(計画と制御)、小脳(運動の調整)、聴覚皮質(音の認識)が連携して働く必要があります。

前頭前野は、老化の影響が最も早く現れる部位としても知られていますし、小脳が担っている協調運動は、リズムトレーニングに欠かせない能力です。

このように、リズムトレーニングは脳の広い領域へ刺激を与えので、将来的な認知機能や学習能力の向上に繋がります。

脳の成長期にあるお子様はもちろん、趣味で弾いている大人の生徒様、シニア世代の脳トレとしても、楽しみながら進めてみてください。

①等速感をつける練習

まず、等速のテンポ感を体に覚えさせましょう。自分の感覚に頼らず、メトロノームを使ってください。

楽譜のリズムが掴めない原因の2トップは、

  • テンポが遅くなったり早くなったりしている→テンポコントロールができていない
  • カウントしている拍が1つ抜けたり増えたりしている→何拍めを弾いているのか分からなくなる

です。同じ速さ(テンポ)で、拍感(ビート)をしっかりと身につけることが重要なので、メトロノームに合わせて、リズム叩き(手拍子)の練習から始めましょう。

始めは馴染みやすい4拍子で

メトロノームを♩=80にセットして鳴らしてください。メトロノームに合わせて、1,2,3,4、1,2,3,4、と声に出してカウントしながら、1拍めは強く、2,3,4拍目は弱く叩きます。

お子様の場合は1拍目にお母さんとハイタッチするなど、遊びの要素を取り入れると効果的です。

1,2,3,4,を8回(8小節の長さ)以上、就学前のお子様は6回(6小節の長さ)ほど続けてみましょう。

途中で、メトロノームよりも速くなったり、遅れそうになった感覚はありませんでしたか?

次に3拍子を

メトロノームはそのまま同じ速さで鳴らしながら、1,2,3、1,2,3、と声に出してカウントし、1泊目は強く叩き、2,3拍目は弱く叩きます。

メトロノームの速さを変えずに、4拍子1,2,3,4,と3拍子1,2,3,を叩き比べて、拍子感の違いや、4分音符1つ分の長さを体感してください。そうして、等速の感覚を身につけましょう。

注意点

練習したメトロノームの速さは、♩=80 のように書いて記録しておきましょう。やり方に慣れたら、♩=90で4拍子と3拍子、♩=100で4拍子と3拍子、とテンポを変えてながら比べてみてください。

②視覚+聴覚の練習

楽譜のリズムを正しく読むためには、視覚で捉えることも大切です。リズムカードや、ワークブックのリズムパターンを使って、リズム叩きをしましょう。

始めは単線のリズム譜を使います。等速感を掴めたら、両手奏に慣れている方は複線の複線のリズム譜に進んでください。

目で見たリズムのパターンと、それを叩いた音とで、視覚と聴覚の統合を促進させることが大切です。

叩けるようになった課題は、メトロノームを使っても叩けるように練習しましょう。リズムを目で追えなくなったり、統速感やリズムのタイミングが迷子にならないように、慣れるまで繰り返して行ってください。

①音楽の流れを意識する練習

リズム読みだけに集中してしまうと、演奏表現に繋がりません。機械的なメトロノームのような音楽になってしまいます。本来、リズムは音楽的な文脈や流れの中にあるものだからです。

ですから、等速感を掴めた方は、音楽に合わせて叩く練習に進みましょう。ワークブックやリズムカードのトレーニングでは体感できない、活きたリズムを感じられます。

実際の音楽を聞きながら、流れや弾みを感じながら叩くことが大切です。単なるリズムの繰り返しではなく、実際の楽曲やフレーズのリズムを体感できます。

リズムは曲を形作っている重要な要素ですから、リズムの流れや弾みを感じたり、リズムの理解を深めることで、演奏にも効果があります。

①リズム感覚は1人ひとり違う

リズムの感覚は人によって違います。これは良い悪いではなく、単に感覚の違いです。リズムを感じ取る速度と精度は、脳や年齢などの理由でみんな違うのです。

誰かと一緒にトレーニングするときは、感覚はみんな違うことを念頭において行ってください。

②段階的に練習しよう

リズムパターンの難易度は、ごく優しい段階から徐々にステップアップすることが大切です。レッスンでも、4分音符だけのパターンから始めて、少しずつ他の音符や休符を加えています。

片手で叩く単線リズム、両手で叩く複線リズム、片足を加えて3パート、のように、使う体の部位も1つずつ増やします。

そうすることで、視覚と聴覚だけでなく、協調運動、拍(時間)感覚の強化に繋がります。

③協調運動を意識してみよう

ピアノやエレクトーンで演奏するとき、右手と左手で違うリズムを弾いたり、足も違うリズムで弾いたりします。そのため、協調運動の能力が必要になります。

リズムトレーニングは、レッスンでもお家でも、この協調運動を意識した練習メニューが大切になります。

④ゆっくりコツコツが大事

リズムトレーニングは、年齢や発達段階に合わせて、楽しめる方法で行うことが大切です。初心者の段階から初級、中級と、少し複雑なリズムまでを長期間かけて取り組むからです。

トレーニングは疲れない程度に、ゆっくりコツコツ続けてください。特に発達凸凹をもつ方や高齢の方は、体に負担がかからない方法とペースで進めることが大切です。

個人に合わせたトレーニングの内容は、レッスンでご一緒に行いますので、お気軽にご相談ください。

①メトロノームを活用

等速感からトレーニングするなら、メトロノームを使いましょう。メトロノームの音に合わせて、等速で手拍子やステップを踏むことで、ビート(拍)を体に覚え込ませます。

演奏の練習でリズムを安定させたい時にも、メトロノームを使うと効果的です。

②録音と再生は効果大

自分の演奏を録音してそれを聴き返すことで、リズムのズレや間違いを自分で気づくキッカケになります。このフィードバックは「ドレミは分かるがリズムが分からなくて弾けない」というお悩みにも効果的です。

③家族の協力

小さなお子様の場合は、一人ではなく保護者様と一緒にリズム遊びをすると、楽しみながら進められ、モチベーションも高まります。家族と一緒に手拍子をしたり、リズムに合わせて歌ったりすることで、楽しみながら自然にリズム感を身につけることができます。

今回は、主に初級のリズムトレーニングをご紹介しました。練習ポイントを意識して、演奏の基礎となるリズム感をコツコツとトレーニングしてくださいね。

演奏表現に必要なのは、もう一歩踏み込んだリズムの感覚です。それは、拍子感だったり、ノリやグルーブ感と呼ばれるものだったり、メロディーやハーモニーと一緒になることで発揮されるものだったりします。

一体になって弾けた時の気持ち良さは、まさに快感です。


この記事について

この記事は、40年近い指導経験と、音楽と指導法の研究、発達障害支援の研鑽、シンポジウム登壇や指導現場でのフィードバック、関連書籍からの情報を基にして書いています。記事の内容は私見であることをご了承ください。古い記事は適宜更新し、今お役に立つ記事を心がけています。プロフィール